股関節専門 増原クリニック ブログ

人工股関節手術後のリハビリの必要性


股関節が痛い


股関節の痛みや変形を治してしまう治療方法が「人工股関節置換術」です。

この手術は、今や日本でも毎年約10万件が行われており、画期的な最新の方法というより、よくある標準的な方法となっています。

「股関節の痛みがなかなか治らない」

「股関節が変形していると言われている」

「股関節の問題で長く歩けない」

と、股関節の問題を長年抱えておられる方にとっては救世主のような存在です。


手術の適応は?

股関節に痛みはあっても、股関節がほとんど変形していない方に、この「人工股関節置換術」を行うことはほとんどありません。
手術の適応は、痛みと変形により如何に日常生活に困難感があるかです。

よって、レントゲン画像などの検査所見により股関節の変形が大きくない場合は、まず保存療法としてリハビリを行います。


まずはリハビリ!

そのリハビリが功を奏して、今までの股関節の痛みが改善し、問題がなくなる方も多勢あります。

その一方で、適切なリハビリを指導しても仕事や家庭での役割などで股関節への負担が大きく、変形が悪化してしまわれる方もあります。
中には、股関節の炎症反応が強く出るタイプの方もおられ、なかなか炎症が治まらず股関節の変形が進行してしまわれる方もあります。

股関節の痛みには、まずはリハビリなのですが、残念ながら上手く治らない方も実際にはおられるのが現状です。

そのときは「人工股関節置換術」の出番となるわけです。


「手術が恐い」

と言う方は病院に足を運ぶことも避ける方がおられますが、
そういう方こそ尚更早めに受診していただき、
リハビリにて改善するかどうかお試しいただくことを強くお勧めします。


「手術に対する大きな誤解」

をお持ちの方も多勢おられます。

ネット情報も収集方法や解釈の仕方により印象を大きく変えます。
股関節治療の専門ではない方の情報も正確ではないかもしれません。

やはり、最先端の知識を持った股関節専門の治療者に直接相談されることを勧めます。


「手術しても治らないのでは?」

とお考えの方もおられます。
知人で手術を受けた方があるが、痛みが治らないとか、傾いて歩いておられるということから、そうお考えになられるようです。

これは手術の限界ではありません。

手術後のリハビリが不足していることが原因の場合が多いです。


手術後のリハビリが完治へのカギ

「人工股関節置換術」で治るのは、
「股関節」という「関節」部分です。

股関節の周りの「筋肉」の問題は、
手術だけでは十分に治らない場合が多いです。

長年股関節の問題を抱えることで、
股関節の周りの筋肉にも問題は広がり、
そして深刻化していきます。

筋肉が落ち、また非常に硬くなり柔軟性を失ってしまいます。

これは手術前の時点での状態です。

その状態で、「人工股関節置換術」という手術を受けて、「股関節」を治すことで、
「股関節」の問題は解消されます。

その後、リハビリをしなくても生活を送る中で、少なからず股関節の周りの筋肉の問題もある程度は改善します。

これは自然な回復です。

手術とその後の自然な回復により、
手術前に比べて痛みが改善し、生活しやすくなることは当然です。

「手術前より良くなれば十分」
という方は、それほどリハビリは必要ないでしょう。


どこまで良くなることを望むか?

その目標によりリハビリの必要性と継続する期間が異なってきます。


残念ながら手術後の自然な回復はそれほど大きくはありません。

ただ歩いているだけでは、
どんどん筋肉がつくということはありませんし、
筋肉が完全に柔らかくなるということもありません。

そのため思い描く目標に到達するには、
やはりリハビリが必要です。

股関節のリハビリというより、
主に「股関節の周りの筋肉」のリハビリが必要です。

手術だけでは治らない股関節の周りの筋肉の問題を解消するために、
適切なリハビリを段階的に継続的に行うことが必要です。

アキレス腱のストレッチ


近年の手術技術の進歩により、
手術を受けてから「手術前の状態に戻る」期間が以前より早く(短く)なっています。

そのため入院期間が短くなり、早く退院できる病院が増えています。
手術後1週間も経たないうちに退院する病院もあります。

しかし、「早く退院できる」ことが良いのかどうか?
必然的に手術後の入院でのリハビリを受ける期間(機会)は短くなってしまいます。

手術後短期間で退院する時点では、家の中は歩いて生活が何とかできるくらいです。
その後、自然な回復により外出したり、階段も昇り降りできるようにはなります。

手術を受けるとリハビリをしなくても、
手術前よりは良くなります。

でも、それだけでは同年代の元気な方に比べると、体力的には到底及びません。

手術前の身体の状態は、筋力を測ると同年代と比べて平均60〜70%くらいまで落ちています。

手術を受け、自然に回復して手術後1年間で
おおよそ70〜80%くらいまで筋力は改善します。

そのあとの足りない約20%の筋力をどうするか?

その足りない分で、
早く疲れやすかったり、
階段をスイスイ昇れなかったり、
旅行や趣味・スポーツを楽しめない、
ましてや、よく転んでしまうということになります。

具体的に体力年齢で示すと、
60歳の方の筋力が20%減ると、
10歳上の70歳の方と同じくらいです。

そのまま10年経つと70歳で元気な80歳と同じくらい。
自分が80歳になると90歳の方と同じくらいの筋力になってしまうということです。

「10歳早く歳をとる・・・」
体力年齢で言われると、「ドキッ」とショックを受ける方もおられますが、本当のことです。


リハビリをせずに自然な回復だけでは、
体力的には早く歳をとってしまいます。

どこかでそれを食い止めて、
努力して手術前に落ちてしまった分の筋力を取り戻す必要があります。

それが手術後のリハビリの役目です。


「手術を受けてしばらく経つけれども、痛みがとれない」

と仰る方も手術後の自然な回復だけでは完全に治らない身体をお持ちの方です。

リハビリが必要です。

自然な回復により手術前と同じくらいの「筋肉の硬さ」にまでは改善したのですが、
それ以上は伸び悩んでいます。

まだ柔軟性に富んだ良質な筋肉の状態ではなく、筋肉の異常な硬さが残っています。

筋肉の硬さが残っていると、
痛みが出る場合が多いです。

リハビリによりストレッチや柔軟体操をして、改善を図ります。

これにも時間がかかるので、
適切な方法を学び、ご自分で継続的に行い、
さらに専門家に定期的にチェックを受けることが大切と考えます。

手術後時間が経過していても改善の余地はあります。

「手術の限界」ではありません。

その痛みの原因をしっかり追究することが大切です。

股関節のリハビリ



「人工股関節の手術を受けたけれども、きれいに歩けない」

という方もリハビリの不足が原因です。

繰り返しになりますが、
「人工股関節置換術」は、
股関節の「関節部分」を治す手術。
股関節の周りの「筋肉」は、手術だけでは治らないとお考えください。

手術を受けて退院したら、
「もう大丈夫」
というわけではありません。

「手術」と「リハビリ」はセットであり、
手術後の改善のカギは「リハビリ」にあります。

思い描く目標を達成するためには、
リハビリが必要です。

別の病院で手術を受けて早くに退院し、
その後お一人でどうやってリハビリをすれば良いのか悩んでおられるという方が多いとよく聞きます。

なかなか1人では難しいものです。

人工股関節の手術後の方で、
当院にリハビリだけ受けに来られる方も多勢おられます。

当院にリハビリ目的に入院して、
集中的にリハビリをすることで劇的に改善される方もあります。

手術後のリハビリの不足が不調の原因です。

適切なリハビリを受け、痛みが改善することで、生活がガラリと変わります。

自然な回復を待っても、
なかなか改善を期待できない問題もあります。



身体に問題がないかどうか?

手術した股関節のレントゲンだけでなく、
運動能力や柔軟性などの身体機能のチェックを専門家に受けられることをお勧めします。

当院では、退院後も外来にてリハビリを継続し、
筋力の測定や柔軟性のチェックを理学療法士により実施しています。

定期的なチェックは、自宅でのリハビリの継続の励みにもなっておられます。

長年悩んだ末、
思い切って大きな決断をして、
人工股関節の手術を受けるわけです。

しっかりと元気な身体を取り戻してもらいたいと思っております。

手術を受けたけれども、
痛みがとれない、
きれいに歩けない、
思うように生活ができないという方、
ご遠慮なくご相談ください。

股関節専門のスタッフが対応いたします。


股関節の不調で悩む方をお一人でも減らしたいと願うばかりです。


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手術した股関節、1人前になるまで・・・


成人式


以前にも、このブログの
人工股関節の手術後のリハビリはいつまで?
の中で紹介しましたが、

手術後の股関節の回復には
皆さまがご想像される以上に奥深いものがあります。

手術を終えた股関節のはたらきは
3、4ヶ月の期間で急激に回復しますが

それだけではなく、
1年以上にわたって
ジワジワと右肩上がりに回復していきます。


人間の股関節は
日常生活のあらゆる場面で機能します。

つまり、手術した股関節のはたらきが
どのくらい回復しているのか

日常生活のなかで
どのくらい股関節を使いこなせているのかということは

あらゆる角度から
検討しなければなりません。

痛さ、歩く姿、まがる角度・・・いろいろありますが
今回ご紹介するのは
“体重をかけること=荷重”
についての報告です。


椅子スクワット


足に体重をのせること、体重をかけることを
“荷重(かじゅう)する”と表現します。

これは、手術の前や手術の後
左右の足に
どんなふうに荷重するかを調べた研究報告です。


158名の患者様を対象に
それぞれ立っている時と椅子から立ち上がる時の
荷重を調べたところ

手術の前、
立っている時は
痛いほうの足に43%、痛くないほうの足に57%の割合で

椅子から立ち上がる時は
痛いほうの足に37%、痛くないほうの足に63%の割合で
荷重していることがわかりました。


仮に、左右の足に均等に荷重できれば
50%ずつの割合になるわけですから

痛いほうの足にはおよそ4割程度しか
体重をかけていないことになります。


手術の前ですから
痛みは当然、
左右の足の長さが違ったり
筋力が弱くなっていたり
股関節が曲がらない、あるいは伸びない、などなど

荷重できない事情は
複雑に絡み合っているのでしょう。


そして手術の後、

立っている時は
1ヶ月を経過した段階で
手術したほうの足に48%、手術していないほうの足に52%の割合で
荷重できるようになりました。

これは、左右ほぼ均等な状態です。

しかしながら
椅子から立ち上がる時は
1年を経過してようやく
手術したほうの足に46%、手術していないほうの足に54%の割合で
荷重できるようになりました。


つまり、
椅子から立ち上がるような動作では
じっと立っている姿勢よりも
手術した足に荷重することは難しい
ということなのです。


“椅子から立ち上がる”なんて動作は
ごくごく日常的でありますが、

手術後1年を経過して
ようやく股関節を十分に使った動作ができるとも
捉えられるのです。


手術を終えた股関節、
単純に立てる、歩ける…だけではなくて

日常生活のなかで
本当に股関節がはたらいているのか?
本当に手術した足を使いこなせているのか?

せっかく手術を受けたなら
1人前の股関節になるまで
とことん追求してみませんか?
専門クリニックがお手伝いをさせて頂きます!

病院


追記
今回ご紹介した内容は、増原クリニックでの研究報告です。


■参考文献
Miura N. et al:
Leg loading during quiet standing and sit-to-stand movement for one year after total hip arthroplasty.
Physiotherapy Theory and Practice. 2018.

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あなたの活動量は世界水準?


ウォーキング

人工股関節の手術は
今どき世界の多くの病院で行われており、

人工股関節とともに生活されている方は
世界中にいらっしゃいます。


今後、人工股関節の手術を考えておられる方には
手術をすると
一体、どのくらい元気に動けるようになるのか
知りたいところではないでしょうか?

あるいは
人工股関節の手術を受けられた方にとっては
ご自分の運動能力が
十分に回復しているか
気になるところではないでしょうか?


国際的な指標として
成人に推奨される活動量は

少なくとも週5日、
30分以上の中等度の運動(ウォーキング、フラダンス、太極拳、掃除機での掃除など)を行うこと

あるいは
少なくとも週3日、
20分以上の強い運動(ジョギング、水泳、テニス、重いものを運ぶなど)を行うこと
とされています。


いかがでしょうか?


少なくとも週5日と言われると
少しプレッシャーがかかるかもしれませんが

30分くらいの活動なら
そんなに難しい注文ではないような・・・。


人工股関節の手術後の活動量

今回ご紹介するのは
2011年に発表された
オランダからの研究報告です。

人工股関節の手術を受けてから
1年が経った方々が
どのくらい活動しているかについて調べたものであり、

先ほどの国際的な活動量の指標を
どのくらいの方々が
達成できているかを検討しています。


調査は
人工股関節の手術を受けた653名(平均年齢70歳)を対象に
アンケートを行いました。

その結果、
人工股関節の手術を受けてから
1年が経った方々では

平均して1週間に約24.5時間、

換算すると
1日に3時間半程度、
活動している(仕事、家事、レジャーなど)と報告されました。

先ほどの活動量の指標に照らし合わせると
人工股関節の手術後1年が経った方々の67%が
推奨レベルをクリアしていることになりました。


1日に3時間半程度の活動、
皆さまはいかがでしょうか?


年齢を区切って分析した結果、
75歳以下の方々(473名)では

平均して1週間に約27時間
活動しており

そのうち、おおまかにですが
家事に週13時間
ウォーキングに週3時間
仕事に週2時間
スポーツに週1時間半
費していることがわかりました。


これはあくまで平均値であり
個人差が大きいことも合わせて報告されています。

活動量の指標をクリアしている方は
72%になりました。


また
全体の傾向として
若い年代の方々で活動量が多く、
痩せ型の方々で活動量が多いことも
報告されています。


人工股関節の手術受けてから
1年くらい経てば
だいたい7割の方々は
一般的な活動量に達していることになりますね。


皆さまの活動量は
国際基準をクリアしているでしょうか?



■参考文献
Physical activity behavior of patients 1 year after primary total hip arthroplasty: A prospective multicenter cohort study. Phys Ther. 2011;91:373-380.

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人工股関節の手術後に何年経ってもキレイに歩けない?



きれいに歩く


入院される患者さんによく聞かれます。

「キレイに歩けるようになりますか?」


やはり、股関節症を患う方は女性が多く、
そのほとんどの方が歩き方のような見た目の問題を気にされます。


人工股関節の手術の目的は、
「股関節の痛みを治すこと」
それが1番大きな目的です。

その次には、
「脚の長さを左右合わせること」か、
「キレイに歩けるようになること」でしょうか?

しかし、ここで注意が必要なのは、
人工股関節の「手術だけ」では、
「キレイに歩けるようになる」とは限らないということです。

日本人女性は昔から我慢強く、献身的な方が多いこともあり、
股関節が痛いにもかかわらず、
耐えて、長年そのまま生活されておられる方が多いです。

股関節の痛みを長く抱えるほど、
股関節の変形は進行し、
我慢の限界がきて「手術」に踏み切っても
「手術だけ」では、
カラダの全てが治ることは難しい状態になっておられる方がほとんどです。


「人工股関節の手術を受けてから、もう何年も経過するのに、まだ歩くときに身体が傾いている人が近所にいる。」
と、仰る方もよくあります。


それには理由があります。

手術を受けられた時点で、
「手術だけ」では治らない状態にまで悪化してしまっておられた方で、
尚且つ、
手術後のリハビリを適切に継続的に実施されていない方です。


「手術だけ」で自然と歩き方もキレイに歩けるようになる方も中にはおられます。

そのような方は、手術時点で比較的股関節の周りの筋肉の状態が良好であった方です。

反対に、手術時点で股関節だけでなく、
股関節の周りの筋肉まで、かなり状態が悪化してしまっておられた方は、
「手術だけ」ではキレイに歩けることはなく、
手術後のリハビリが必要になってきます。


「手術」+「リハビリ」


しかも、ただ運動をしたり、歩けば良いというわけではなく、
その方の股関節の筋肉の状態に応じた、
適切なリハビリプログラムを継続的に実行する必要があります。


股関節は手術により完全に治っています。


股関節の周りの筋肉は、「手術だけ」では治りません。

股関節の痛みが治り、活動量が増えることで、自然と良くなる部分もありますが、
それだけでは不十分な場合が多いです。

手術後のリハビリにより、
股関節の周りの筋肉の状態を改善することが、キレイに歩けるようになるためには大切になってきます。


1人では難しいです。

要所要所で理学療法士によるチェックを受け、
自主トレーニングの内容の更新が必要です。

筋力を測定することでモチベーションの維持にもつながります。

筋肉の硬さの変化を見て、改善点やまだ残る問題を整理します。


長く股関節症を患われた方ほど、
手術後に「キレイに歩く」ということは、
なかなか難しいものです。


人工股関節の手術を受けてから、
しばらく経つけれども、
まだキレイには歩けないという方は、
まだカラダの中に問題を抱えている可能性が高いです。

その問題を見つけて、適切なリハビリで改善を図れば、キレイに歩けるようになります。



増原クリニックで人工股関節の手術を受けられた患者さんは、
手術後1年経過時点では80〜90%の方が、
キレイに歩くことができるようになっておられます。

昨年の日本股関節学会にて発表させていただき、大きな反響がありました。

残りの10〜20%の方も、
それ以降もリハビリを継続することで、
目標を達成されておられます。

やはり、股関節の状態によりリハビリ期間が長く必要な方もおられます。

我々がサポートし続けることで、
股関節が悪かったことが
全く分からないほどキレイに歩けるようになることが可能です。


「コツコツと努力すること」が苦手な方は多いですが、気長にお付き合いさせていただきます。


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人工股関節の脱臼の予防



人工股関節の脱臼


人工股関節の脱臼


人工股関節の手術後の生活において、
気をつけなければならない「脱臼」

これを防ぐことは人工股関節の歴史において最大の課題です。


脱臼を絶対しない人工股関節は、
今のところありません。


生体の正常の股関節に比べて、
人工股関節のほうが動かすことができる範囲が少しだけ狭くなっています。

その動かすことができる範囲を超えた場合、
人工股関節は脱臼する(外れる)仕組みになっています。



「脱臼しない人工股関節はないのか?」

手術を受けられた患者さんに何度も聞かれたことがあります。

それは難しいと言うより、
「脱臼する」仕組みが最良であるとして、あえてそれを選んでいます。

「え?」と思われるのが当然だと思いますが、これには理由があります。


結論から申しますと、
「脱臼する」仕組みにしておかないと、
無理に股関節を大きく動かした際に、

「人工股関節が骨からとれてしまう」
可能性があるからです。


人工股関節のずれ

(人工股関節が骨からずれている画像)




当院ではありませんが、
実際に脱臼しにくい作りにしたばっかりに手術して置き換えた位置から、
人工股関節ごとズレてしまったケースもあるようです。


これは再手術が必要になります。


人工股関節の「脱臼」は再手術は必要ありません。

「脱臼」の場合、
人工股関節の上下の部品が連結しているのが外れてしまった状態です。

脱臼



麻酔をかけて股関節をはめ直せば、元に戻ります。

すぐに歩くことも可能です。


しかし、人工股関節を脱臼しない仕組にすると、同じように股関節の動く範囲を超えて脚を動かした際に、
股関節にかかるチカラが大きければ、骨盤にはめ込んだ金属がとれてしまう可能性があります。

骨からズレてしまうわけです。

これはもう一度手術をして治すしかありません。
大変な手術になります。


人工股関節の「脱臼」する仕組みは、
この最悪な事態を避けるための最善の策と言えるかもしれません。

今のところ。




1960年代から人工股関節の手術がされるようになり、50年が経ちました。

その間、人工股関節の材質やデザインの改良は常に進められており、
それと同時に手術技術の改良もどんどん進んでいます。

そのため、人工股関節の脱臼は激減しています。

10年ほど前までは、
手術を受けて脱臼される方は全体の5%くらいでした。

100人に5人と思うと非常に多い気がします。

現在では、それが1%かそれ以下にまで下がっています。

100人に1人。

多いのか少ないのか、割合の問題ではないと思います。

やはり、誰も脱臼される方がいらっしゃらないのが良いです。

誰にも痛い思い、恐い思いをして欲しくない。



そこで我々は、もうひと工夫加えました。

人工股関節の改良、

手術の改良、

それに加えるものは、
患者さん本人に人工股関節について理解してもらうことです。


自分の身体のことなので当然知る権利がありますし、我々医療者は伝える義務があります。

しかし、医学的なことは専門性が高く、理解することは難しいです。

一般の方に理解してもらうためには時間がかかります。


時間がかかるから?
詳しい説明をしても理解が難しいから?と、

「人工股関節について」

「手術について」

「脱臼について」

あまり詳しい説明をしない病院もあると聞きます。

それでは自分が受けた治療について詳しく知らないまま、その後の生活を送ることになります。

不安ですし、もし不具合が起こったり、脱臼してしまった際に後悔することになります。


例えは悪いですが、電気機器の取扱説明書をほとんど読まずに使い、早くに故障してしまってから後悔することと同じです。

取扱説明書の通りに使い、手入れをしておれば故障せずに長持ちする可能性が高くなります。

自分の身体のことであれば、電気機器よりも大切に扱って当然ですよね。


人工股関節の取扱についても、
しっかりと詳細まで説明して、
理解していただき、
安心して永く共に歩んでもらいたいと願います。



今までも試行錯誤を重ねて、どうやって「人工股関節の特徴について」理解してもらおうか工夫して参りました。

人により股関節の状態が異なり、生活環境も役割も趣味もお仕事も異なります。

みな同じ説明をしていると当てはまる人と当てはまらない人がでてきます。

そのため個別に注意点や工夫ポイントを説明し、人工股関節への理解を促して参りました。


それでもゼロにはなりませんでした。


そこで、さらに説明を丁寧にしました。

実際の動作方法や注意点などを写真を入れてまとめて資料として配布することにしました。


人工股関節手術後の生活指導




それまでは個別に実際の動作を練習して覚えてもらっていましたが、
それだけでなくいつでも読み返すことができるように、
個別の人工股関節の取扱説明書のように「人工股関節の手術後の生活の手引き書」を作り上げました。


1回で覚えることは難しく、2回3回と練習して一旦理解していても、
退院してしばらく経てば忘れてしまう。

それは当然のことです。


しかし、取扱説明書が自分の手元にあり、何度も見返し、学ぶことで注意喚起ができ、
その生活を繰り返しているうちに習慣化してきます。


「注意することが多くて大変だ」

「脱臼が恐い」

と仰られていた人も、

写真と図をもとに説明を繰り返しているうちに、本質を理解していただき、
少しずつ安心と自信がついてこられます。



我々のアンケート調査では、
退院後の1週間は不安や恐さはあったけど、
それ以降は毎日同じ生活の繰り返しで少しずつ不安はなくなりました。
と仰る方が多かったです。


折角、手術を受けて脚が元気になったのに、
その反面で生活が狭まってしまえば手術の効果も半減してしまいます。


生活への恐さや不安をできるだけ減らし、
安心して安全な生活を送っていただくためには、
自分のこと(人工股関節と共に歩む生活のこと)を知ってもらうことが大切です。


全員に同じ指導内容にはなりません。

人により異なります。


筋肉の硬さがある程度残っている方は、それほど脱臼について注意しなくても構いません。
言えば、脱臼する可能性が著しく低い方です。

反対に、筋肉が柔らかい方は手術後においても股関節の動きが大きく、
脱臼について注意が必要です。
筋肉が柔らかい方=脱臼する可能性がある方です。


人工股関節手術後の脱臼

この姿勢は人工股関節の脱臼の危険性の高い姿勢ですが、
足の小指を見ようと思い、膝を立てて内側に捻っています。

筋肉の硬い方は、この姿勢ができません。
だから脱臼する危険性はありません。

しかし、筋肉の柔らかい方は、この姿勢ができるため要注意となるわけです。



普通は筋肉が柔らかいほうが良いのですが、
人工股関節の脱臼については筋肉が柔らかいほうが注意が必要になってしまいます。

難しいですね。


お一人おひとりの股関節の状態、筋肉の状態に合わせて、
また生活環境やお仕事内容、趣味などに合わせて、
個人用の取扱説明書を作成しています。

また、人工股関節の仕組みについても実際に模型や動画を用いて説明いたしております。


人工股関節の脱臼メカニズム





この効果もあり、
2016年に増原クリニックで人工股関節の手術を受けられた方の中で脱臼してしまった方は誰もおられませんでした。

脱臼者はゼロでした。


今のところ2017年も脱臼された方はおられません。



手術を受けることを悩んでおられる原因の1つに、「脱臼」のことを挙げられる方があります。

ネットなどで情報収集され、余計に不安が募られておられることが多いです。


人工股関節の構造上切っても切り離せない「脱臼」ですが、
医療の進歩により確実にその危険性は減っています。


もしかすると自分は股関節の状態からすると脱臼の危険性がかなり低い人かもしれません。

一度、専門家に聞いてみないと分かりません。


我々にとって「人工股関節の脱臼」を防ぐことは永遠の課題ですが、
その課題の大きさも少しずつ小さくなってきており、
解決への道へ近づいている実感があります。


股関節に痛みのない安心で安全な快適な生活を送ることができるように、
精一杯サポートさせていただきます。



脱臼については一言で語ることはできません。

熱く長くなってしまい申し訳ありませんでした。



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