股関節専門 増原クリニック ブログ

階段の上がり降りの方法



階段の高さ


前回は「階段の上がり降り」という動作について、細かく分割して見てみました。

「階段の上がり降りの時に股関節が痛くて困る」という方、

人工股関節の手術を受けられた方で、「階段の上がり降りはあまりしないほうが良いの?」と聞かれる方は多いです。


今回は「どのように階段を上がり降りしたら良いか」という方法について考えてみます。


どのくらいの負荷がかかるのか

まず、階段の上がり降りが身体にどのくらいの負荷になるのか調べてみました。
運動強度については、以下のようになっています。


階段の昇降の運動強度


階段は普通に歩くというよりもきついと感じる運動であり、降りるときよりも上がるほうがややきつい運動のようです。

階段昇降運動はよくダイエットにも勧められますし、関節に痛みがなければ足腰の強化または体力作りとして普段の生活の中で行うには良い運動と言えるかもしれません。


では、股関節にかかる負荷はどうでしょうか?

過去の研究のレビュー(まとめ)によると、健常な人の階段の上がり降りでは、
膝を伸ばそうとする力は歩行の時と比べ大きくなるのに対し、股関節の力は歩行の時と変わらないとされています。

結構意外に思われるかもしれませんが、
たしかに元気な人では太ももやふくらはぎの筋肉では押す力が強く、
股関節まわりの筋肉はそれほど頑張らなくてもよいのかもしれません。

股関節にかかる負担は、階段の上がり降りはふつうに歩くときの2~3倍大きくなると言われています。

このため、人工股関節の手術をされた方は、人工関節の耐久性を気にされて、
極力、階段を使わないようにしているという方もあります。

しかし、そこまでする必要はありません。

たしかにふつうに歩くより階段のほうが股関節にかかる負担は増えるかもしれませんが、
生活で必要な範囲で階段を上がり降りするくらいでは、人工の股関節は傷みません。

我々のクリニックでも「階段は使わないほうが良い」とは指導しません。



階段の負担


変形性股関節症の方で、おしりの筋肉だけでなく太ももの筋肉も痩せておられる方は、
脚全体の支える力が弱っており、さらに股関節の曲がりにくさもあるため、
階段を上がり降りするために、より頑張らなければならず階段が辛く思われる方があります。



どのように階段を上がり降りしたら良いか

ふつうは両足を交互に挙げて階段を上がり、両足を交互に降ろして階段を降ります。

手すりを使うという方もあります。

階段を1歩1歩揃えて上がり降りする方もおられます。

階段を上がり降りする方法は、その方の身体の状態により異なりますが、
一言で言えば、痛みや無理を感じないように上がり降りする方法が一番良いです。

痛みを我慢して階段を上がり降りすることは、余計に症状が悪化しますので良くありません。

階段の上がり降りの途中に痛みが出る場合は、必要な場合を除き階段を利用することを極力避けるべきです。

ただ、日常の生活ではどうしても階段を利用しなければならない人も多いと思いますので、いくつかポイントを挙げてみます。



家の断面図


段の高い階段

段差が高いと股関節の負担が大きくなるので注意しなければなりません。

身長は人それぞれですので、目安は段に足を乗せる際に「上げにくい」と感じる高さかどうかになります。

建築基準法によると住宅では階段の段の高さは23cm以下となっています。

大抵20㎝前後の段の高さの住宅が多いので、健康な方は問題ないと思いますが、
股関節症を患っている方は辛いと感じる方もあります。

また、上がりかまちや勝手口、外出先の高い段や車やバスの乗り降りの際に辛いと感じる方もあります。

このような場合は、痛いほう(股関節を患っているほう)と反対側の足を先に上げ、一段ずつ足を揃えながら上がるようにします。

両足を交互に挙げずに、良いほうの足から先に1歩1歩揃えて上がります。

スピードは遅くなりますが、痛みは出にくいです。

降りる際は、反対に痛い方を先にゆっくり下ろして反対を揃えるようにします。

ただ、降りる場合はそれほど股関節が曲がらないので、痛みなく支えられる人は手すり等でバランスをとりながら交互に降りても問題はありません。


高い段の上がり降りのポイントは「反対の良いほうの脚で支えて確実に」ということになります。

「よく行きは良い良い(良いほうの足から上がる)、帰りは恐い(悪いほうの足から降りる)」と言って、方法を覚えてもらいます。

この方法で階段を上がり降りしているという方は多いかもしれません。

反対側の脚が元気な状態であれば、この方法が良いです。

中には、膝がなかなか持ち上がらなくなり、反対の足で背伸びをするようにして階段を上がっておられる方もあります。
時間はかかりますが、1歩1歩揃えて上がり降りしてみると楽かもしれません。

また、階段に対して半分くらい横向きになって上がり降りすると楽にできる場合もあります。



段の低い階段

住宅では結構急だと感じる段差は多いですが、

一方で駅などの公共施設ではバリアフリーの観点から段がそれほど高くはなく、16cm程度以下となっていますので、それほど高くは感じない人も多いでしょう。


階段ののぼり方

このように足を「上げにくい」と感じない程度の高さであれば慎重になり過ぎず、
痛みが無ければ、手すりや杖を使いながら勢い(慣性)を利用して交互に上がる方がよいと思います。

段の高さが低いと必然的に段の数は増えますので、揃えながら上がる方法では一段ごとに勢いが止まるため時間がかかる上に余計に支える力を要してしまいます。

少し重心を前に移動させ、前に進むようにするとリズムよく上がることができます。

もちろん勢いを生み出す体力や膝(太もも)の力は必要ですが、階段を見上げた時の段の多さや股関節への負担を考えすぎて重心が後退してしまうとかえって上がりにくくなるため、ここは思い切りも必要だと思います。

降りの場合も同様ですが、あまり勢いがつくと衝撃が強くなりますので、手すりや壁などで少しサポートしてバランスを整えた状態で降りることをお勧めします。

階段の上がり降りも、体が良い状態に保たれていれば股関節にはそれほど大きな負担にはなりませんが、
痛みや筋力が弱った状態ではとても負担を感じる動作の一つになります。

大切なのはご自分の体が今どういう状態なのかということを把握し、少しでも良い状態を保つことができるよう対応していくこと。

「言うは易し」ですが、やはりそれしかないと思います。

微力ながらお手伝いさせていただきます。


参考文献
1) Brouwer et al. A Review of the Physical Demands of Stair Negotiation in Healthy Aging and Following Stroke. Phys Med Rehabil Int 2(7), 2015
2) R Riener et al. Stair ascent and descent at different inclinations. Gait and Posture 15; 32–44, 2002


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